生活習慣病
当院でも高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病の治療を行っています(あまり重症の場合は内科の専門の先生に紹介させていただくこともあります)。なぜなら、これらの生活習慣病と言われる病気は脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)や認知症のリスクを高めるからです。
ここでは生活習慣病に関して解説していきます。

高血圧

「高血圧は治療しなくていい」、「ちょっとくらい血圧高い方が健康にいい」はウソです!!
健康に関する啓発本や週刊誌でちょくちょくみかけるこのような言葉ですが、基本的には誤りです。中には医師でもこのような発言をされる方がいますが..血圧が正常な範囲を超えて高い人は投薬や運動や生活習慣改善などでちゃんと下げたほうが良いのは紛れもない事実です。
※特定の病気があるために血圧を下げすぎないほうがよい方も一部いますがこれは例外的です。
「高血圧は治療しなくていい」は間違った知識なのですが、血圧の薬を長い間のむことになるのが嫌だな~と感じている患者さんにはこういう甘い言葉は心地よく響きますよね。この辺りについて解説します。
高血圧

どのくらい高かったら高血圧なのか

まず、高血圧症は血圧が140/90mmHgを超えた状態のことです。これは病院や診察室で測ったときの話です。
ちょっと運動したり、嫌なことがあって怒ったりしているときは瞬間的に180くらいまで上がったりすることはよくあります。そのくらいならすぐに高血圧症の病気とは断定できません。ただし診察室で安静にしているときに測っても140/90mmHgを超えるようなら治療を考えた方がいいでしょう。
家で安静にして測ったときの数値は普通もう少し低くなるので、家での血圧がしょっちゅう135/85mmHgを超えていればそれは高血圧症(=病気です)といえます。一般的には130/80mmHgを切るのを目標に治療を行います。
高血圧症の原因としては塩分の摂りすぎが有名ですね。他にはそもそもの体質や遺伝によるもの、加齢、肥満、ストレス、運動不足などがあります。あとは腎臓の病気などが原因でおこる二次性高血圧というものもあります。

高血圧が人体をどのように破壊していくのか..それは主に「動脈硬化」です

動脈硬化は高い血圧に長年さらされた動脈がだんだんボロボロになっていく状態です。高い圧によって管が劣化していくのは水道管と同じですね。動脈の場合は高い圧力のせいで血管の壁が固くなったり、もしくは血管の壁に傷がついてそこにプラーク(コレステロールの塊)ができたりします。高血圧の人の血管は徐々に硬く、狭くなっていきます。そして脳卒中につながっていきます。
この動脈硬化は脳に限ったことではありません。心臓や腎臓の動脈も同じようにやられていきますので、心筋梗塞や腎不全といった病気のリスクもどんどん上がっていきます。やはり血圧は下げたほうがいいのです。

「血圧は下げたほうが良い」の根拠って何?

なぜ医者は血圧を下げろ下げろと言うのか..それは何百人、何千人という患者さんの統計のデータを基に話をしています。
例えば有名な研究だと2015年のSPRINT試験という9000人以上の患者さんで行われた研究では、血圧をしっかり下げた(120以下)患者さんのグループの方がそうでないグループに比べて心筋梗塞や脳卒中の発症率、死亡率が低かったという結果が出ています。それ以外にも多くの研究で同じような結果が出ています。
そういった背景があって、「血圧を下げた方が重大な病気になったり死亡したりする確率が下がりますよ」とお勧めしているわけです。
高血圧を治療すれば脳卒中のリスクは3~4割程度減らせますが、もともと脳卒中を発症する人数は日本では1年間に22万人程度います。きっちり全員の高血圧を治療すれば7~8万人くらいの脳梗塞を防げる計算ですね。
ただし、血圧を下げなかったからといって必ずしも脳卒中や心筋梗塞になるわけではありません。高血圧の患者数は日本では4300万人くらいいて、そのうち44%が治療を受けていないと言われています。1900万人くらいの人が高血圧を治療していない計算です。
このような統計をみたときに
「全員が高血圧をちゃんと治療すれば7~8万人の脳卒中を防げる!治療しよう!」
「高血圧の治療してなくても脳卒中にならない人が1000万人以上もいる!無理に治療しなくてもいいかな」
あなたはどちらだと感じますか?私なら少しでも脳卒中の確率が下がる方を選びたいです。高血圧を放置してそれでも自分が脳卒中を起こさないほうに賭ける、というのであれば無理にとは言いませんが、できれば皆さんに健康に長生きしていただきたいというのは医者の共通の思いです。
高血圧は脳卒中だけでなく心筋梗塞や腎不全にもつながります。これらの病気は現代ではすぐに死んでしまう病気ではありません。
  • 脳卒中で手足の麻痺が残ってしまって介護が必要になった
  • 心筋梗塞の後遺症のせいでちょっと歩いただけで息切れするようになった
  • 腎不全になって週3回の血液透析がなければ生きられなくなった
このような辛い状況に患者さんが陥ってしまうのを防ぐためにも、高血圧の治療をおすすめします。

高血圧の治療

内服薬

カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)、利尿薬、β遮断薬などの種類があります。最近は何種類もの薬を混ぜて1錠にした合剤というものもあり、1日1回1錠だけ飲めば十分に血圧が下がる人も多いです。

生活習慣の改善

減塩(1日6g未満)、習慣的な運動、減量(適正体重まで落とす)、食生活改善(油分すくなめ、野菜を多めに)、禁酒、禁煙などです。

高脂血症(脂質異常症)

「コレステロールの薬は無理して飲まなくてもいい」は場合によっては正しいかもしれません
高血圧と同様に健康啓発本や週刊誌でよくネタにされるのがこのコレステロールに関する話題です。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い状態がつづくとLDLコレステロールが血管の壁にどんどん溜まって分厚くなっていき(プラーク形成)、最終的には血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞になります。高血圧や喫煙習慣もある患者さんではこの過程がより生じやすくなっており危険です。
このLDLコレステロールの正常な数値は140mg/dL以下と定められており、140mg/dLを超えていれば高コレステロール血症という診断になります。
しかし、実際の治療において目標とされる数値は必ずしも「140mg/dL未満」でない場合もあります。高血圧、糖尿病、喫煙の有無、動脈硬化による病気の有無、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の数値などで細かく評価した上でそこまでリスクが高くない患者さんと判断されれば、LDLが160mg/dLまでは許容されることもあります。逆にLDLを120mg/dL未満や70mg/dL未満に下げないといけない患者さんもいます。
その意味では、「LDL 140mg/dLを超えたら絶対すぐに薬のまないとダメ」とはいえません。しかも軽症の方は生活習慣の改善や運動でLDLが下がる方もいます。
また、85歳を超える超高齢者の方ではLDLコレステロールを下げることによるメリットがはっきり証明されておらず、さらにLDLを下げすぎることによる弊害(虚弱や免疫低下)も指摘されているため薬を飲まない場合も多いです。
ただし、主治医の先生に薬を飲むよう勧められた場合は基本的には飲んでおいた方がよいと思います。
高脂血症(脂質異常症)

LDLコレステロールを下げる薬について

LDLコレステロールを下げる薬にはプラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチンの6種類があります。
このようなスタチン系の薬剤の有名な副作用として、「横紋筋融解症」があります。これはスタチンを飲んだ患者さんの0.001%(10万人に1人)に起こると言われている副作用で、筋肉が溶けてしまい全身の倦怠感、激しい筋肉痛やこわばり、赤褐色の尿などが見られます。入院での治療が必要になることがほとんどです。
この恐ろしい副作用のために飲むのを躊躇する方も多いと思います。実際に週刊誌などでもこの点で恐怖を煽って「飲まないほうがいいクスリ」みたいな記事がよく書かれます。
しかし運動やスタチンの内服でLDLを適正な数値まで下げることで脳卒中や心筋梗塞などのリスクを20%低下させられるのも事実です。特に脳卒中や心筋梗塞をおこしたことのある方は絶対に高LDL血症の治療をしておいた方がよいと思います。
スタチン系薬剤による横紋筋融解症については非常に稀ですが100%完全に防げるものではありませんので、飲んでいる最中に激しい筋肉痛やだるさを感じたらすぐに飲むのを中止して受診しましょう。定期的な診察や血液検査で早期にみつけて治療するのも大事です。
その他の治療薬としてはエゼチミブといって、小腸で食物からのコレステロールの吸収をブロックするタイプの薬もあります。

高脂血症の食事療法など

高脂血症(脂質異常症)の改善を目指すためには、食生活の改善も重要です。

控えた方がよいもの

脂身の多い肉、たらこ、バター、チーズ、うなぎ(飽和脂肪酸)
カロリーの過剰摂取、揚げ物、炒め物、甘いもの、お菓子

摂取した方がよいもの

青魚、オリーブ油などの植物油(不飽和脂肪酸)、野菜
海藻、きのこ、蒸し料理、ゆで料理、焼き料理

糖尿病

糖尿病も脳卒中のリスクを高めます。アルツハイマー病のリスクも高めます。
膵臓でつくられるインスリンは血液の中にある糖分を筋肉や脂肪に取り込ませます。このインスリンの作用が不十分になると血糖値が上がり、さまざまな症状や障害が出てきます。
1型糖尿病では膵臓のランゲルハンス島という部分の細胞が壊れてしまいインスリンそのものが作れなくなります。注射でインスリンを定期的に補充する必要があります。
2型糖尿病ではインスリンを作る膵臓の機能が低下するのに加えて、インスリンの働きが鈍ってしまうことで発症します。インスリン注射以外の飲み薬だけでも治療を続けていけるケースも多いです。
糖尿病によって引き起こされる合併症としては神経障害(手足のしびれ、感覚低下、自律神経の障害)、網膜症(目の奥の血管がやられて視力低下・失明)、腎障害(腎臓の機能が徐々に低下して最悪の場合は人工透析)などが有名です。
それだけでなく、高血圧と同様に糖尿病も動脈硬化(動脈が硬く細くなる)を引き起こしますので、脳梗塞や脳出血や心筋梗塞などの危険性を高めます。足の指先の血行が悪くなって切断しなければいけないケースもあります。
最近の研究で判明した事実として、「糖尿病はアルツハイマー病のリスクを高める」というものがあります。インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性といいます)や高い血糖によって、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ蛋白が脳に蓄積しやすくなると言われており、糖尿病の患者さんではアルツハイマー型認知症を発症するリスクが1.5~2倍になると言われています。

糖尿病の治療

糖尿病の治療には大きく分けて生活習慣の改善(食事・運動療法)と薬物療法があります。食事は1日3食をバランスよく食べ、適正な量のカロリーを摂取することが重要です。運動についてはそこまで激しい運動は必要なく、1日30分程度のウォーキングを週に3~5回行うだけでも十分効果的です。
薬物療法については飲み薬(DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬、SU薬、ビグアナイド薬など)、注射薬(GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤)などが用いられます。
当院でも軽症の糖尿病の患者さんに内服薬の処方を行うこともありますが、重症の患者さんや注射が必要な患者さんは専門の内科に紹介させていただいています。

高尿酸血症

尿酸が高い=痛風だけではありません。脳卒中や心筋梗塞にもつながります。
肉やレバーやイカ、酒が好きな人は尿酸が上がって痛風になる(足の付け根が痛くなる)。こういった知識を持っている方は多いでしょう。もちろんこれは事実です。しかし尿酸が高い高尿酸血症は痛風発作の原因となるだけではありません。
高い尿酸値は動脈硬化をひきおこして脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。痛風の発作が出ていないからといって高い数値を放置しないほうがよいのです。
高尿酸血症

高尿酸血症の治療

高尿酸血症の治療で重要なのは食事療法と薬物療法です。
食事についてはプリン体が多い食べものをあまり摂らないようにするのが重要です。具体的にはレバー、魚介類の干物(イカやイワシなど)、カツオ、干し椎茸、ビール、エビ、たらこなどです。
また、野菜、海藻、きのこ、低脂肪乳などは尿酸値を下げる効果が期待できるので積極的に摂るようにしましょう。
高尿酸血症に対する薬としては尿酸の生成を抑えるフェブキソスタット、アロプリノールなどが使われます。もしくは尿酸の排泄を促すベンズブロマロン、プロベネシド、ドチヌラドなども使われます。