頭に強い衝撃が加わると頭蓋骨が骨折したり頭の中に出血したりします。CTやMRIでその診断が可能です(頭蓋骨骨折に関してはCTの方がはっきり見えやすいケースも多いのでCTを優先することもあります)。
頭の中の出血
急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷
慢性硬膜下血腫は、頭を打って1~2ヶ月経ってからじわりと出血がたまるタイプのもので、緊急性はないことがほとんどです。ここではそれ以外の緊急性のある3つに関して書きます。
※「慢性」はゆっくり、だらだらとというような意味合いで、「急性」は急激に、という意味合いです。
急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷は頭部の外傷の直後に頭の中に急激に出血が起こるという点では同じですが、出血が起こる部位が異なります。硬膜という脳を包む膜の外側に出血が起これば急性硬膜外血腫(図2)、硬膜の下で脳よりも外側に起これば急性硬膜下血腫(図3)、脳そのものが傷ついて出血した場合は脳挫傷です(図4)。
※(図1)は正常なCTであり、院長自身を撮影したもの、他の出血の画像は(図1)を加工したものです。
※(図2)凸レンズ型の血腫が特徴的
※(図3)三日月型の血腫が特徴的
※(図4)脳の内部に白と黒が入り混じったような画像が特徴的
いずれも出血の量が少なくて自力で出血が止まっていれば入院してそのまま様子を見ます。手足にできる内出血と同じように、数日から1ヶ月程度経てば出血は消えていきます。
出血の量が非常に多くて死亡する危険性が高い場合、出血が出続けている(もしくはそう予測される)場合には緊急で手術を行い、出血の塊(血腫=けっしゅ)を取り除きます。重傷の場合は手術を行っても助からないもしくは後遺症が残ることがあります。当クリニックでもこれらの急性の出血が見つかった場合は救急の病院に紹介させていただきます。
慢性硬膜下血腫
頭を打った後に、1~2か月かけて少しずつ出血が脳の表面に溜まってくるタイプの出血です。高齢者に起こりやすいタイプの出血です。頭に衝撃が加わることで脳と頭蓋骨の間の空間(硬膜下腔)にある細い血管が傷つくことが原因です。必ずしも頭を打っていなくても起こってきます(尻をついただけでもおこる場合があります)。
溜まった出血によって脳が圧迫されて、認知症のような症状が出たり、手足の麻痺が出たりします。ケガをしてから症状が出るまでに1~2か月かかることも多いので、頭を打ったかどうかを患者さんに尋ねても覚えていないという人もいたりします。「最近急にボケたな」と感じたときは一度受診してCTかMRIを受けてみてください。
慢性硬膜下血腫の手術
慢性硬膜下血腫は出血の量が少なければ薬を飲んでそのまま様子をみるという手もあります。自然に出血が消えていく人もいます。しかし出血が多くて症状がひどい場合や、なかなか出血が消えない人は手術をすることもあります。
慢性硬膜下血腫の手術は頭蓋骨にに2cmくらいの穴を開けて、溜まった血液をそこから抜くためのチューブ(ドレーン)を差し込むというものです(図5~6:穿頭血腫ドレナージ術)。血溜まりを排出するためのチューブを一晩入れておき、翌日にチューブを抜くという流れです。これで8~9割の患者さんが完治します。
※(図5)灰色がかった三日月型の血腫が特徴的
※(図6)頭蓋骨の一部に穴が開き、そこから血抜きの管(ドレーン)を挿入している
しかし中には手術の後にもまた出血が溜まってくる人がいます(再発)。頭にチューブを入れる手術を何度か繰り返すことで完治する人もいますが、最近は慢性硬膜下血腫に対して血管の中からカテーテルで治療をする方法(血管内治療)も多く行われるようになってきています。
腕や太ももの動脈から細い管(カテーテル)を入れて脳のあたりまで持っていき、「中硬膜動脈」という細い動脈に詰め物を入れてしまいます。中硬膜動脈は慢性硬膜下血腫の血が溜まる主な原因となっている動脈ですので、これが詰まることによって慢性硬膜下血腫が治ります。
脳震盪とセカンドインパクト症候群
脳震盪は頭部に衝撃が加わることで起こる脳の機能の低下です。頭の外傷の後にCTやMRIで異常が写らない場合でも頭痛やめまいや吐き気、集中力の低下などがしばらく続くことがあり、これは脳震盪によるものです。
特にスポーツをしている人に多く、いわゆるコンタクトスポーツ(ラグビーやアメリカンフットボール、柔道、サッカーなど身体的接触の多いスポーツ)はリスクが高いと言われています。
脳震盪で一瞬気絶していたけどもすぐに目を覚ましてまた競技を続行するーーーこんなシーンは一昔前は現実世界でもドラマなどでも時々みかけていました。
しかし現在ではこれは大変危険な行為として禁止されています。脳震盪は画像の検査で異常が写っていないだけであり、様々なダメージが脳組織に加わった状態とされています。このダメージが回復しきる前に再び脳震盪を受けると重い後遺症が残って寝たきりになったり死亡したりします。これがセカンドインパクト症候群です。ラグビーやアメリカンフットボールや柔道ではしばしば死亡者も出ています。
近年はとくにラグビーやアメリカンフットボールでセカンドインパクト症候群に対する認識が広く共有されるようになり、脳震盪の後の競技復帰のルールがかなり厳格に定められています。
大雑把に言うと、軽い脳震盪でも丸1日、完全に気絶するレベルの脳震盪であれば2~3週間は試合や試合形式の練習は禁止となります。実際の休養期間は受診していただいた上で、それぞれの競技の協会が定めている期間も参考にして判断させていただきます。
頭蓋骨骨折
頭蓋骨の骨折はヒビ程度であることが多く、ヒビ程度であれば様子を見ていれば自然にくっついてくるものがほとんどです。ヒビの部分で大きく骨同士が離れてしまっている場合や、乳幼児の骨折で成長に伴って骨折したヒビが広がっていくような場合(growing skull fractureといいます)は手術をすることもあります。他にも、バラバラに骨が砕けるような形の骨折や、一部だけ骨が陥没してしまっているような骨折も手術をすることがあります。
専門の病院で入院して治療をした方がよい骨折として他にも髄液漏(ずいえきろう)を起こしているケースがあります。鼻や耳の近くの骨を骨折すると、ヒビを通じて鼻や耳から脳髄液が漏れてくることがあります。頭の外傷の後に鼻や耳からサラサラとした透明(もしくは薄い黄色やピンク)が出てきている場合は受診をお願いします。放置しておくと漏れた脳髄液を通じて雑菌が逆に脳の方に入っていって髄膜炎や脳炎を起こすことがあります。
頭を打ったけど、受診した方がいいの?と迷う場合
頭を打ったけど受診したほうがいいのか迷うケースは多いと思います。打ったのがお子さんであればなおさらです。頭の皮膚が切れて派手に出血していればまず受診するでしょうが、そうでもない場合は迷う方が多いです。俗に言われる「たんこぶができていれば頭の内部は大丈夫。たんこぶができてないのは危ない」というのは全くの嘘で、たんこぶの有無と頭の内部の損傷の有無には関係はありません。
まず原則として「大丈夫かどうかよく分からないし不安だ」という場合は遠慮なく受診していただいて構いません。
医師向けにはCanadian CT Head RuleやPECARN小児頭部外傷ルールなどの「外傷後に頭のCTを撮るべきかどうかの判断基準」があります。細かく知りたい方はその名前で検索していただければ読むことができます。
これらをざっと噛み砕くと、CTを撮ったほうがよいケースとしては下記の通りです。
- 頭を打った直後に気絶していた
- 頭を打った後に嘔吐した
- 頭を打った後にボーッとしている、ほうっておくとすぐに眠ったような状態が続いている(意識障害)
- 頭を打った後や前の記憶がない
※「突然だったのでどのようにぶつかったか分からなかった」という意味で「覚えていない」と表現される方はよくいますが、これはそういうレベルでの「記憶がない」の話ではなく、ぶつかった前後の数十分以上の記憶が抜け落ちている場合です
- 高いところから転落した
- 車にはねられた事故、バイクでの事故、車の車内から放り出されるような事故で頭を打った
- 打った場所が明らかに陥没している、頭が変形している
- 鼻や耳から水が漏れてきている(髄液漏の可能性があります)
- 頭を打った後に目の周りや耳の周りに内出血が起きている(頭蓋骨骨折の可能性があります)
- 親からみて頭を打ったあとの子どもの様子がなにか普段と違う、おかしい
ただしここに挙げた基準はあくまで指標のひとつですしかなり簡略化していますので、当てはまらなければ絶対大丈夫と保証してくれるものでもありません。判断がつかない、よく分からないという場合は遠慮なく受診してください。