顔の一部が自分の意思と関係なくピクピク勝手に動く(けいれん)場合、いくつかの病気が考えられます。
まぶたのピクつき
まぶたがピクピクっと動いてしまう場合、以下の4つの病気が考えられます。
眼瞼ミオキミア
疲れたときやストレスがかかったときにまぶたがピクピクっと震えた経験を持っている方は多いと思いますが、そのようなまぶたの痙攣の多くはこの眼瞼ミオキミアです。チック症とは違いすばやく細かい痙攣で、通常は片眼だけに起こります。下に述べる「眼瞼けいれん」という病気ではピクツキにともなって眼を開けるのも難しくなることがありますが、眼瞼ミオキミアでは眼を開けられなくなることは通常ありません。健康な方でも眼の使いすぎ、疲労、ストレス、睡眠不足などでこの眼瞼ミオキミアが出ることがあり、十分に休んでいれば普通は数日から数週間程度で自然に収まります。
眼瞼けいれん(本態性眼瞼けいれん)
まばたきの制御、まぶたの運動の制御を行う脳の神経回路の様々な異常によって、過剰なまばたき、意図せず眼を閉じる運動が反復的に生じてしまう病気です。突然に勝手に目が閉じてしまうことにより自転車や自動車で事故を起こしてしまうこともあります。重症になると目を開けるのも辛くなってきて、ほとんど目が開けられなくなる人もいます。両眼ともに起こることが多い病気です。その他には通常の光でも非常に眩しく感じる(羞明感)、眼の不快感や痛み、眼の乾燥感、涙が勝手に出る、頭痛、耳鳴り、抑うつなどの症状が出ることもあります。眼瞼けいれんは単独で発症することもありますが、自律神経失調症、うつ病、パーキンソン病などに伴って発症する場合もあります。抗不安薬、睡眠薬などで眼瞼けいれんが誘発されるケースもあります。治療としては飲み薬ではクロナゼパム(リボトリール)、カルバマゼピン(テグレトール)バルプロ酸ナトリウム(デパケン)などの痙攣止めの薬が使われます。セルシン、リーゼといった抗不安薬も使われることがあります。注射薬として3~4ヶ月ごとのボトックス(ボツリヌス毒素注入療法)なども使われることがあります。
チック症
チック症は子供の頃に発症することが多い病気です。眼に症状が出た場合は発作的に突然まぶたをギュッと閉じるような動作を数回繰り返します(世界的な映画監督でお笑いの大御所のあの芸能人の方もチック症と言われていますね)。成長とともに自然に治る場合もありますが、大人になってからもずっと症状が続く方もいます。小児科や精神科、脳神経内科などを受診することをお勧めします。
片側顔面けいれん
脳の中心部にある脳幹という部分から顔面神経(顔の筋肉を動かすための神経の束)が出てきますが、片側顔面けいれんでは蛇行した自分自身の脳の動脈がこの顔面神経を圧迫することで顔面のけいれんが起こると言われています。まぶただけでなく、おでこや頬の筋肉、口の周りの筋肉もピクつくことがあります。ひどい人になると首の片側の筋肉(広頚筋)もピクつく場合があり、常に顔面の片側と首の片側がピクピクしている人もいます。この片側顔面けいれんでは表情を作ろうとした時、会話、疲労、ストレスや緊張などで顔のピクツキが一時的に増加します。アルコール摂取で一時的に症状がよくなる場合もあります。片側顔面けいれんの診断は対面での診察に加えて、頭部MRI(CISS画像やFIESTA画像などと呼ばれる撮り方)を行うことで診断できます。顔面神経が脳幹から出てくるところで血管によって圧迫されているのが見えます。片側顔面けいれんの治療ではカルバマゼピン(テグレトール)、クロナゼパム(リボトリール)、バクロフェンなどの内服薬が使用されます。痙攣している顔面の筋肉へのボツリヌス毒素の注射(ボトックス)なども行われています。薬が効かない、あるいは副作用で使えないなどの方には手術が行われることもあります。Jannettaの手術(神経血管減圧術と呼ばれるこの手術は脳神経外科で行われます。耳の後ろの皮膚を切開して頭蓋骨を数センチ程度切り開き、顔面神経を圧迫している血管をすこしだけずらして固定します。これにより顔面神経が圧迫されなくなって症状が改善します。